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歴史万華鏡コラム 2026年01月号

歴史万華鏡
高知市広報「あかるいまち」より

未来へつながるニホンカワウソ

1月号写真
●寄贈された剥製

皆さんはカワウソという動物を見たことがあるだろうか。テレビや動物園などで見たことがある人も多いかもしれない。私自身も動物園で見たカワウソの、水中に入ると空気を含んだ毛皮から泡がプクプクと出る様子や、かわいらしいけど魚を食べるときはちょっと邪悪に見える顔などが思い出される。

令和7(2025)年の夏、当館へニホンカワウソの剥製が寄贈された。ニホンカワウソは、昭和54(1979)年の須崎市新荘川での目撃が最後の生存記録とされている。高知の川でニホンカワウソが生き生きと泳いでいる姿は、もう見ることができないかもしれない。しかし、標本が残っていればニホンカワウソのことを知ることはできる。今回、当館へ寄贈された個体は昭和46(1971)年に土佐清水市で網にかかってしまった個体だそうだ。このように、高知県にニホンカワウソがいたという証拠となるのはもちろんだが、それだけではない。

DNAから種やルーツを調べたり、CTスキャン等で剥製や骨格標本の内部を調べたり、歯についた細かい傷から食性を調べたりと、一体の標本からさまざまな情報を得ることができる。まさに、その個体や種の歴史を知ることができるのだ。近年の研究や技術の進歩により、これまでは難しかった古い標本からのデータ採取や、標本を傷つけない手法も増えてきており、今後ますます、生き物の謎が標本からひもとかれることが期待される。過去に生きていた個体なのに、新たに分かることが増えていくなんて、なんだか不思議でワクワクする。また、3Dデータ化された標本は、研究だけでなく、3Dプリンターで出力し触れる模型などとして活用することもできるため、当館でも少しずつ試みを始めている。

このニホンカワウソの剥製は、令和8(2026)年1月末まで、高知みらい科学館で展示中である。高知の標本を未来へ残していくとともに、過去からヒントを得て、今を共に生きる動物や自然についても思いを巡らせるきっかけとなれば幸いである。

高知みらい科学館 学芸員 笠貫(かさぬき) ゆりあ

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※このページは、高知市広報「あかるいまち」に掲載されている「歴史万華鏡」のコーナーを再掲したものです。