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歴史万華鏡コラム 2023年06月号

歴史万華鏡
高知市広報「あかるいまち」より

牧野富太郎と田中茂穂

6月号写真
●田中茂穂(左)と牧野富太郎

ここに、一枚の写真がある。一人は牧野富太郎(1862~1957)。もう一人は、高知市出身の魚類学者・田中茂穂(1878~1974)である。田中は、同郷の研究者である牧野と親交があり、この写真は、1943年ごろ東京の牧野邸を訪ねたときに撮ったものである。

牧野と田中の共通点は、高知出身の研究者というだけではない。牧野が「植物分類学の父」と呼ばれるのに対し、田中も「魚類分類学の父」と呼ばれている。この写真が撮られたときも、二人は郷土や分類学について語り合ったという。

分類学とは、生物の(しゅ)を区別して名前をつけ、グループ分けをすることにより、生物の多様性を明らかにしていく学問である。

牧野は、全国で植物を採集し、新種を発見し、1940年には『牧野日本植物図鑑』を出版した。この図鑑を編集するのに、約十年の歳月がかかったという。牧野のほか数名が描き、牧野が校閲したとされる正確で簡潔な植物図がこの図鑑の特長である。牧野の植物図は、単に一つの植物のスケッチではなく、多数の個体を観察し、その個体が典型的・標準的なものであるかを考慮して描かれているという。

田中は、1911年から1930年にかけて、『日本産魚類図説』全48巻を完成させた。この図鑑に掲載している287種のうち、41種が新種である。また、1235種の魚類を掲載した『日本産魚類目録(英文)』も出版している。牧野が植物学に貢献したのと同じように、田中は日本の魚類分類学の先駆けとして多大な貢献をした人物なのである。

そして、二人の共通点はもう一つある。それぞれの学問で得た知識を広く伝えるため、随筆など、一般向けの書籍を多く書いている点である。

科学を一般の人に分かりやすく伝える ── 牧野や田中が現代に生きていたら、ぜひ、高知みらい科学館で、科学教室を開いてもらいたい。

高知みらい科学館 学芸員 岡田 直樹

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※このページは、高知市広報「あかるいまち」に掲載されている「歴史万華鏡」のコーナーを再掲したものです。