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歴史万華鏡コラム 2022年08月号

歴史万華鏡
高知市広報「あかるいまち」より

相合傘

8月号写真
●「相合傘」 岡本楠次郎・作

よさこいの夏がやってきた。新型コロナウイルス感染症の流行により、よさこい祭りは三年連続で今年も中止だが、形を変えて特別事業の「2022よさこい鳴子踊り特別演舞」が開催される。

よさこいは、鳴子を手に持って前進しながら踊る等のルールはあるものの、正調のほか、ロック調やサンバ調、ラップ調ありで、振り付けや演奏のアレンジは自由だ。現代的なバンドが地方車(じかたしゃ)の上で、「土佐の高知のはりまや橋で坊さんかんざし買うを見た」と、よさこい節の一節になった幕末の悲恋を歌う。

この僧・純信と鋳掛屋(いかけや)の娘・お馬の物語は、よさこい節から派生して相合傘の人形になった。よさこい人形やはりまや人形とも呼ばれる人形で、明治元(1868)年に起こった戊辰戦争に従軍した岡本楠次郎が、東京で目にした相合傘の人形から着想したという。

それを「坊さんかんざし」の張り子人形に改変し、坊さんが人目をはばかって頬かむりでキョロキョロする様子を、首振りで表現したところに遊び心が光っている。

首振りは、重り入りの首が揺れる仕掛けで、張り子の虎や赤べこに使われてきた伝統的な技法である。

また、楠次郎の本職は花台のデコ(人形)師で、高知座の芝居の大道具師も務めていたが、西畑(さいばた)人形も手掛け、見えを切った時に眉が動く侍の頭を作るなど人形を動かす仕掛けに長けていた。

相合傘は、動きの面白さやローカル味で、市民や県民、そして全国の郷土玩具好きに愛され、高知を代表する郷土玩具の一つとなった。西沢笛畝(にしざわてきほ)著『うなゐの友』(七巻)には、「男の首の左右に動くの妙 此の人形の生命なり」「珍品の一つなり」と紹介されている。

楠次郎亡き後も、相合傘の作り手が幾人も登場し、張り子だけでなく土鈴や紙絵馬などにもアレンジされた。

伝統と革新の出会いが、人々を魅了する創作の連鎖を生むのだと、相合傘は教えてくれる。

高知県立歴史民俗資料館 学芸員 中村 淳子

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※このページは、高知市広報「あかるいまち」に掲載されている「歴史万華鏡」のコーナーを再掲したものです。