ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

本文

カワセミのいる風景

No.24 カワセミのいる風景

ほぼ週刊鏡川 2010年9月30日

キバナコスモスにとまるチョウ


 先日,久しぶりにトリム公園付近でカワセミに出会いました。ここで見るのは実に1年ぶりです。
 私的キング・オブ・小鳥であるカワセミ。いつ見ても素敵です。

トリム公園前のカワセミ

 実はこの場所,今年の1月から2月にかけて,洪水防止のために河床が浚渫(しゅんせつ)され,大きく環境が変わってしまいました。下の写真は工事直後です。

浚渫工事直後のトリム公園前

 このあたりは昔は真土場(まつちば)と呼ばれ,河床が真土(粘土)であり,その粘土は能茶山まで通じています。河床を浚渫することでその粘土が現れ,ずぶずぶの底なし沼のような生き物の生息には適さない場所となっていました。

 カワセミも姿を消し,その消息が心配されました。河原もなくなり,人の近づけない川となっていました。ここ数年は大きな洪水もないので,しばらくはこの泥沼状態が続くのかと心配されました。

 しかし,自然の営力とはすさまじいもの!
 川の神様のが怒ったのでしょうか。この春は,数年来発生しなかった大きな洪水が何度も起こり,上流の堰にたまった砂利を運んできてくれました。下の写真は現在の様子です。

洪水により復元したトリム公園前

 2010年6月26日のピーク時の鏡ダム放流量は実に毎秒479トン。最大放流量のみでいえば,大水害をもたらした'98豪雨時の毎秒370トンよりも100トン以上多く放流したことになります。ちなみに通常時の放流量は5トン以下です。

 河川改修は,確かに人命や財産を守る大きな効果があります。しかし,その一方で失われて行くものも大きいのです。生き物が住めない環境というのは人間の住めない環境です。昆虫が植物の受粉を助けているように,生態系は複雑に絡まりあってお互いに共生しています。もちろん人間も生態系の一部です。

 「治水か,環境か」といった二者択一ではなく,「治水も,環境も」といった河川改修の方法もあるはずです。折りしも10月18日より,生物多様性条約締約国会議(COP10)が名古屋で開かれます。議長国である日本は,より強力に生物多様性を守っていくことが重要です。そして生物多様性を守ることこそが人類を守るのだという共通認識を持つことが大切です。

 カワセミが飛び,アユが群れ,人々が集う鏡川のこの風景をいつまでも守っていきましょう!

ほぼ週刊鏡川目次へ