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清流の美しい集落で見つけた、
わたしができること。

二段階移住 取材レポート

四万十市 高濱望さん

シェアハウス・ゲストハウス経営、セラピスト

■やりたいことを、好きな地域で。

四万十川とその支流の黒尊川が合流する四万十市西土佐の口屋内(くちやない)地区。清流がはぐくむ小さな集落で、広島から移住した高濱望さんは、シェアハウスとゲストハウスを営んでいる。

高濱さんは、地元の高校を卒業後、山口県の大学へ進んだ。卒業後は、特別やりたいことはなく、とりあえず広島に戻って地元の企業に就職した。そこで任されたのは、農家を取材し、記事を制作する広報の仕事。こなすうちに、やりがいを覚えた。ところが4年後、部署が変わり、おもしろさを見出せずに転職を決意する。

別の会社を経て、慣れない事務の仕事に就いた。このことが一つ、転機をもたらす。「肩こりがひどくて、そのときに受けたリンパケアですごく身体が楽になったんです」。その施術は、痛くないマッサージで知られるさとう式リンパケア。はじめて、やりたいと思えることを見つけ、働きながらマッサージの資格を取得した。資格を生かしたいと模索していたとき、旅先のモンゴルで、京都で活動する地域おこし協力隊に出会う。

■高知の可能性を直感する。

自ら選んだ地域で、お金をもらいながら、なりわいを築く。初めて耳にする新しい働き方に、高濱さんはピンときた。「どうせだったら自然が近い場所で働きたい、自分が好きな場所に暮らしてみたい」。そう思いを巡らせながら、ウェブ上で、協力隊を募集している地域を探した。希望のエリアは中国地方、九州地方、そして四国。各地を訪れる中で、惹きつけられたのが高知だった。

いろんな人とすぐつながるし、とにかく話が早いんですよ。やりたいことを実現できる風土だと聞いて『ここしかない』と直感しました」

次に、高知県内で募集している地域に下見へ。その一つが、今暮らす西土佐だった。山道を走らせた先に見たことのない絶景と出合う。四万十川の支流・黒尊川の神秘的な美しさ、感じたことのない澄み切った空気感。望さんは迷わず、西土佐を移住地に選んだ。

■ぜいたくで、“楽”な新生活。

31歳単身、西土佐の山奥の「奥屋内(おくやない)」へ。地区では最若手になる高濱さんを気にかけたのは、区長夫妻。「自宅に招かれることもしょっちゅうで、地元の人の温かさが寂しさを埋めてくれました」。移住してから得たものは、知らない人と突然始まる世間話だったり、自宅の窓を開ければ目の前に広がる清流の景色だったり。新天地の暮らしは「楽で、ぜいたく」だと感じたという。

協力隊の活動では、セラピストの資格を生かして、各地の健康サロンに出向き、望さんが考案した体操を広めながら、地域の人たちとつながっていった。
「ここに来たら、何かわたしにしてほしいことがあるのだろうと思っていたんです。でも基本的にはみなさん、それぞれ暮らしを楽しんでいるから、特別やってほしいことはないんですよね。おるだけでいい、みたいな。だったら、わたし自身ができることはと自ら考えて、やり始めたのが体操だったんです」

もう一つ、高濱さんがやりたかったのがゲストハウスだ。山形でゲストハウスのヘルパーをした経験もあり、“田舎”にいながら新しい出会いに事欠かないなりわいをやってみたかったという。

「高知は個人事業主がとても多くて、だからなのか、みなさん行動に瞬発力があるんです。夢を口にすれば、周りの人がさっと動くのがこの地の気質です。空き家を探しているって言っていたら、家主さんの方から、『この家に住まんか?』って声をかけてくれました」

理想的な空き家を手に入れ、2018年、協力隊の任期満了まで1年を残して“卒業”した。口屋内の集落にある自宅兼シェアハウス兼ゲストハウスの名前は「オキオカ」。この地区の方言で、自分から見て川の向こう側を「オキ」、手前を「オカ」と呼ぶことから、そう名付けた。

■性格も目標も変わっていく。

庭付きの一軒家の管理は想像以上に大変で、そんなときは、ご近所さんに“SOS”を出す。
「もともと、人にまったく頼らない性格でした。でもここに暮らし始めてからは、自宅周りの草刈りとかご近所さんを頼ります(笑)。人とつながっていた方が、世界も広がるし、やりたいこともトントンと進みますから。いろいろサポートしてくれますが、干渉してくるわけではなく、ゆるやかなつながりが心地いいと感じています」

「オキオカ」ではこれまで、観光客を含めいろんな人を迎えてきた。現在は、シェアハウスの看板を掲げ、2020年6月には、宿泊の条件を「四万十エリアへ移住したいと考える女性限定」に舵を切った。以前、移住相談を受けた女性が今、シェアメイトの一人にもなっている。

「四万十が好きな人と話すのがわたし自身、楽しいですから。それに、移住した当時、地域の人たちから温かく受け入れてもらって、今があります。その気持ちをお返ししたい。一人の女性でも気軽に地域とつながる、そんな役割を果たすゲストハウスになりたいですね」

やりたいことを探す、人生の果てなきミッション。高濱さんは、移住して、地域と移住希望者をつなぐ場所をつくり、つなぐ人になる役目を見つけた。その清々しいまでの思いと取り組みは、このまちの先の風景をすこしずつ変えていくだろう。

文:ハタノエリ 写真:丹生谷千聡

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