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自伐型林業で、
自分と林業の可能性を切り拓く。

二段階移住 取材レポート

佐川町 滝川景伍さん

林業家(自伐型林業)

■東京の編集者から一次産業への転身。

近年、国内で注目を集める「自伐型林業」。山の所有者の許可を得て、個人または少人数のグループで伐採や搬出を行う持続可能な林業のことを指す。森林率が国内トップの高知県にあって「自伐型」で先行するのが佐川町。滝川景伍さんは、この「自伐型」に惹かれて、東京の出版社を辞め、2014年にこの町へ移り住み、フリーランスの林業家として活動している。

佐川町は自伐型林業と、国の制度である「地域おこし協力隊」を組み合わせ、林業の担い手を増やすという独自の林業モデルを築こうとしている。その第一号が滝川さんだ。京都に生まれ育ち15年、その後、長野で3年間を過ごした。進学で東京へ。出版社に就職し、カメラの雑誌などの編集者になった。

締め切りを抱え、多忙な仕事に身を捧げること8年。自身に子どもができたことで、改めて身の振り方を考えた。「仕事は楽しかったですし、やりがいもあったのですが、このままでは子育てができないだろうなと感じていました。どうせ転職するのなら、前から興味があった一次産業がいいと思っていました」

「自伐型林業」という言葉に出会ったのは、そんなタイミング。「大学の先輩から聞いて、手軽に林業にチャレンジでき、環境にやさしく、生活もできるという。何より、おもしろそうだと。林業だけでは選ばなかったです。『自伐型』というこの3文字に、なぜかとても惹かれましたね」。世の中の動きに敏感でなければならないのが編集者。その直感が働いたのだろう。早速、ウェブ上で調べて見つけたのが、佐川町の協力隊募集の記事だった。

■町のバックアップで林業家として
自活する。

2014年、妻と生まれたばかりの子どもとともに佐川町へ移り住む。林業の仕事は、作業をするための道づくりから始まった。どこに道を作ればいいか、木を伐採する向きはどうすればいいのか。講師から学んだことを反復練習で身につけていく。

佐川町には、森林の所有者から許可を得て、20年間、自伐型林業家に割り当てる仕組みがある。そうして放置される森林を減らし、必要な手を入れて豊かな森を育てている。協力隊の3年間で、林業に必要な資格をすべて取得した滝川さんには協力隊を卒業後、自分が手入れする山が割り当てられた。

「協力隊を卒業すると同時に、生計を立てるための山が確保できたのはとてもありがたかったです。林業はやればやるほど、奥深い。道を一つ作るにしても、山の地形、水の流れを読まなくてはいけません。大先輩の林業家はパッと見ただけでそれがわかる。尊敬しますね。そして今、ぼくがやっていることは、子どもや孫の世代でようやく実る仕事。長いスパンで結果が出る、というのもとても魅力的です」。

■まちと山をつなげる“編集者”へ。

林業を、山だけの仕事に完結するつもりはない。森林を維持していくためにはもう一度、山と地域の人たちをつなぐ必要がある、と滝川さんは言う。今、山歩きのイベントを企画するなど、山と人とを結い直す“編集者”としても活動の場を広げている。

山と地域とを結ぶ仕掛けの一つとして、滝川さんが可能性を感じるのが「さかわ発明ラボ」。木材を地域で活用するための場として佐川町がつくった。ここでは、レザーカッターや3Dプリンターなど、最新の機器がそろい、地域の子どもたちを対象にした「放課後発明クラブ」も定期的に開催されている。木材をキーワードに、魅力的なモノ・コトを展開するこの場所で、「自分で伐った木で何かをつくることもやってみたいですね」と滝川さんは笑顔で話す。

■ここで生きる決意の先に見えるもの。

佐川暮らしも6年になる。東京時代に比べ、生活リズムもがらりと変わった。共働きのため、子どもを保育園に送るのは滝川さんの役。家事を済ませてから山に行き、子どものお迎えのため午後5時には仕事を切り上げる。子どもと一緒に過ごすため、土日はできるだけ働かないようにしているという。

好きな仕事、家庭を大事にできる暮らし。理想的に写るものの、このまちで生きていくことに迷った時期もあったと本心を打ち明ける。

「まずは3年間自伐型の修業をしようと思って佐川町に来たので、“ずっと”という思いは当時、ありませんでした。正直、“都会シック“になることもありました。ないものねだりをしていたのですね。ただ、どこにも理想郷はなくて、結局、自分がどう生きたいかが大事なのだと気づきました」

■フリーランスになり、主体的な自分を
知る。

フリーランスの自伐型林業家として生きるために、佐川町を選んだ滝川さん。限られたエリアで林業を継続していくために、複業も掲げた。

かつて、林業は農家が担う仕事だった。「二足のわらじ」は本来、リスクヘッジができる林業家の働き方の理想と滝川さんは考える。写真好きの編集者という経験を生かし、写真整理アドバイザーの資格を取得。現在、滝川さんが暮らす地区の写真を一冊にまとめる仕事もしている。協力隊を卒業後、フリーランスになった滝川さんの仕事は今、どんどん広がっている。

「こんなに主体的に動くタイプの人間ではなかったのです。独立してから活動的になりましたね。どこかに所属して働くというのではなく、自分の名前と顔で仕事ができることがきっと楽しいんでしょう。林業とは全然違う集まりで、林業に絡む新しいことが始まるというのは、このまちではよくあることです。軸は林業に置きながら、いろんなつながりを育てて、自分と林業の可能性を広げていきたいですね」。自分のその手で、「滝川景伍」という一つの“道”を、佐川町というまちにゆっくりと築いていく。

文:ハタノエリ 写真:徳丸哲也

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