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ふたたび移住することで
見つけた、
“一生もの”の地域と住まい。

二段階移住 取材レポート

香美市 松原香奈美さん

ベビーウェアリングコンシェルジュ
子育て支援サークルままぱぁく代表

■ワールドワイドに生きる。

高知市の中心地から車で約40分、香美市にたどり着く。松原香奈美さんは、この地が気に入り、最初に移住した高知市を離れ、家族3人で暮らす。あふれる自然、地域とのつながりを味わいながら、また一歩踏み込んだローカルな暮らしの魅力を味わっている。

三重県桑名市に生まれ、中学校まで地元で育った香奈美さん。その後、アメリカ北東部のバーモント州にある高校へ。短大で学んだのち、リゾートホテルのフロント係や保険会社で働いた。プラクティカルトレーニングビザの期限が切れるタイミングで帰国。その後は、現地で培った語学力を生かし、長野オリンピックで海外の人をアテンドする語学ボランティアなどを経て、名古屋市内の商社に就職した。

その間も、「ふたたび世界へ」という想いはくすぶり続ける。30歳を目前に、ワーキングホリデーの年齢制限を控え、29歳、渡仏した。異国の地で、現在の夫・浩二さんと出会ったことが大きな転機になる。

■六本木の注目店、からの疑問。

2人とも帰国したのち、結婚と同時に、一緒に東京で暮らし始めた。自分たちの店を持つというゴールのために、4年間、開店準備の期間を設け、2010年、六本木ヒルズの目の前にフレンチレストランを構えた。もともと有名レストランのスーシェフだった浩二さん。新しい“門出”に取材依頼が殺到するなど注目店としてスタートを切った。ところがその3カ月後に東日本大震災は起きた。

「自粛ムードがしばらく続きました。お客さんが来ない状況は苦しかったですね」。香奈美さんは当時の心境をそう振り返る。

“六本木価格”ではリーズナブルで、本格的なフレンチを提供する2人の店に、客足が戻ってきたのは半年後。ところが、次第に2つの悩みが生まれていった。一つは、グルメサイトの星の数で、席の予約数が大きく左右されるという評価至上主義。もう一つは、震災の影響で、自分たちと2人の間にできた子どもが口にする食べものの安全性だった。

ちょうど、入店するビルが耐震の問題で取り壊しになることもあり、悩みを解決できる道を模索し始める。「働き方を変えることができて、安全・安心な食材が手に入る場所で暮らそうと思い、移住を考えました。九州や中国地方などいろんな候補が挙がる中で、突き抜けてよかったのが高知でした。以前、高知へ旅行をしたとき、食べもののおいしさやまちのおもしろさに惹かれたんです。いろんな地域と比べてもやっぱり高知がいいね、という結論になりました」

■食の美味しさ、豊かさを知る。

2016年、松原家の3人は高知市へ移住した。浩二さんは新店舗をオープンする一方、香奈美さんは子育てに専念し、週末には、いろんな地元グルメや特産品が並ぶ「土佐の日曜市」や、オーガニックマーケットなど、子連れで出かけては、高知の食の豊かさを実感したという。

「六本木のレストラン時代に高知の食材を扱っていたので、高知の食の豊かさは知っていたつもりでした。でも本当のすごさは暮らしてみて初めて実感しましたね。お肉、魚、野菜もくだものも何もかもがおいしくて。授乳が終わってから10キロも太っちゃいました」と香奈美さんは笑う。

親子で高知最大の祭り「よさこい」にも参加

■もう一度、高知で引っ越しをする。

仕事でもプライベートでも、県内のあちこちに出かけるうちに、夫妻に大好きな場所ができた。それが、「雰囲気がよく、明るく感じた」という香美市だ。3年間暮らした高知市を離れ、「見晴らしのいい最高の場所」に念願の一軒家を建てた。

「松原ミート」は、『こうち食べる通信』の特集を組まれた。

新築した自宅は、浩二さんの工房も兼ねる。浩二さんは2019年、食肉加工の免許を取得し、高知市時代の店舗名と同じ「松原ミート」の屋号で、手作りのシャリュキュトリ(パテなどのフランス伝統の加工品)の加工から販売までを手がけている。

高知市から20㎞ほどの距離だったが、風景も一気に拓かれ、人間関係の濃さがまるで違った。「“田舎”では玄関に野菜が置かれると聞いていたのですが、本当だったんですよ(笑)。野菜が玄関前においてあったり、近所のおじちゃんが上半身裸で農作業していたり、そのゆるさが心地よく、時の流れもゆったりと感じます」

■地域に役割があるという愉しさ。

香奈美さんは、高知市で暮らしていたころから、子育ての支援サークルを立ち上げたり、抱っことおんぶをきちんと教えることで体の負担を減らす「ベビーウェアリングコンシェルジュ」として講座を開いたりと、自分の仕事と役割を生み出してきた。

見知らぬ土地で子育ての孤独を埋めるために資格をとって、自らの居場所と仕事を開拓してきた香奈美さん。「おむつなし育児」のアドバイザーの資格も取得し、防災の講座を依頼されるまでに活躍の幅を広げている。今後、防災士の資格も取得するつもりだ。

香美市に移住してからは、さらに地域の中に踏み込んだ活動も担う。移住政策をはじめ、まちづくりに取り組むNPO法人「いなかみ」の理事として、地域を盛り上げるための話し合いに参加している。

「子育て世帯が移住してきやすいような環境づくりなど、この地域のために自分ができることを考えていきたい。ワクワクしますね」。そう語る香奈美さんの表情は、このまちの雰囲気のようにまぶしく輝いていた。

文:ハタノエリ 写真:石川拓也

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