

移住レポート
report
「ゆず」に魅せられ高知へ。
二段階移住で描く産地の未来
岡山 栄子さん
移住前居住地:大阪
(大阪府⇒2025年7月高知県高知市)
セラピストとして活動する中で「ゆず」が持つパワーに魅了され、単なる農作物にとどまらない「ウェルネス産業」への可能性を広げるために高知県に拠点を置くことを決断。長年通い続けてきた北川村との縁を大切にしつつ、あえて「二段階移住」という制度を活用した理由とは?ゆず産業への熱い想いと、理想の暮らしにたどり着くための移住スタイルについてお話を伺いました。

移住のきっかけを教えてください
私は大阪でセラピストとして活動する中で、日本の「和精油」、特に「ゆず」の持つポテンシャルに深く魅了され、エビデンス(科学的根拠)を取りながらその効果を広めることに力を注いできました。
転機となったのは、自身が2017年に出版した著書『病気にならないゆず健康法』です。この本をきっかけに、ゆず農家さんから問い合わせをいただいたほか、ゆずの産地である北川村の「モネの庭」副支配人であり、観光協会の副会長でもあった福井さんからもご連絡をいただきました。その後、約8年間にわたり北川村との関わりを持ち、徐々に深いつながりを築いてきました。
活動する中で目の当たりにしたのは、美しい実だけが出荷され、残りの半分近くや搾汁後の皮が廃棄されている現実でした。「捨てるところがない」と言われるゆずが、実際には捨てられている。「これでは農家さんも後継者も希望を持てない。」そう強く感じ、廃棄される部分から精油や化粧品原料を作り、ヘルスケア分野で付加価値をつける事業を始めました。当時は大阪から北川村へ通いながらその事業を行っていましたが、徐々に「通い」での活動に限界を感じるようになりました。
ゆず産業の課題解決に本気で取り組むには、自分が県民になることが最も近道だと考え、さらに人口減少が進む高知に移住すること自体が地域への貢献になるのではと思い、2025年7月に移住しました。
二段階移住を選んだ理由を教えてください
産地を「点」ではなく「面」で見るために、二段階移住の制度を利用しました。
これまで北川村との縁は深かったのですが、いつも空港と村を往復するだけだったので、実は他の地域のことはほとんど知りませんでした。いきなり北川村に拠点を移すことも考えましたが、定期的に大阪に帰る必要があることや、最終的な夢は高知県東部全域で「ゆず」を軸にしたウェルネスツーリズムを作ることなので、村という単位だけでなく、広域的な「ゆずの里」として産地を見たいと思っていたんです。そこで、「二段階移住」の制度を利用し、まずは利便性の高い高知市に拠点を置き、ゆず産地へ通いながら最終的な活動拠点を見極めることにしました。また、この制度を使うことで役場の方々ともスムーズにつながることができ、「ゆずのことで」と相談すると、どの窓口でも親身になって情報提供やキーパーソンの紹介をしていただけました。
今は高知市にハブ(拠点)を持つことで、地域全体を見渡すことができています。
一段階目の高知市での暮らしはいかがですか?
個人店が輝く街や食の豊かさに感動する毎日です。
高知市に住んでみて驚いたのは、商店街がとても生き生きしていることです。大阪の商店街はシャッターが閉まっていたり、どこへ行っても同じチェーン店ばかりだったりしますが、高知には個性的で魅力的な個人のお店がたくさん残っています。フランチャイズが少ないことが、私にとってはむしろ大きな魅力ですね。
そして何より、食べ物が本当に美味しい。新鮮な魚や野菜が当たり前のように手に入ります。その美味しさは、友人たちが高知の食を満喫するためだけに、わざわざ高知を何度も訪れるほどです。都会とは違う、地に足のついた豊かな暮らしがここにはあると感じています。
二段階目の移住先と希望の暮らしを教えてください
二段階目の移住先は、ゆずの産地である「ひがしこうち(県東部)」のどこかを拠点にしたいと考えています。二段階移住の制度のおかげで、これまでは通過するだけだった奈半利町や香美市物部地区の方々とも新たにつながることができました。またその中で、住民の高齢化により収穫できずに放置されている「実生(みしょう)のゆず」の存在を知りました。実生のゆずは、植えてから実がなるまで18年もかかる貴重な原種です。これを放置するのはあまりにももったいない。
私は今、こうした放置されているゆず畑を管理・収穫するNPO法人を立ち上げ、ゆずを守る活動も始めています。ゆずが単なる農作物としてではなく、認知症予防や健康への効果を科学的に証明することで、ウェルネスツーリズムの核となる誇らしい産業になります。ゆずの価値を高め、若者が「関わりたい」と思えるような産業を、この東部の地で作り上げていきたいと考えています。

アドバイス
- 移住を考えている方へのアドバイスをお願いします
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インターネットの情報だけでなく、自分の足で歩いてみること。
移住先のリサーチは、まず役場の窓口を訪ね、実際に現地を歩いてみることをおすすめします。役場という公的機関であれば、特定の地域や観光地に偏ることなく、公平な視点から地域全体の情報を教えてくださいます。 また、車移動だけでなく、ぜひ鉄道などを利用して駅から役場まで「歩いて」みてください。歩くことで初めて気づく街の雰囲気や、素敵なお店との出会いがあります。
最後に一つ、現実的なアドバイスを。移住前に「パスポートの有効期限」を確認しておいてください。私は仕事で海外に行く予定があったのですが、移住直後に更新が必要になり、手続きのために奔走することになりました。こうした事務的な準備も、意外と見落としがちなので気をつけてくださいね。
