高知市
あかるいまち 高知市トップへ
高知市トップページ  > あかるいまちトップページ  > 歴史万華鏡(もくじ)  > 2016年7月号
このページは、高知市広報「あかるいまち」に掲載されている「歴史万華鏡」のコーナーを再掲したものです。
歴史万華鏡
執筆「こうちミュージアムネットワーク」の皆さん
第50回 人がつくった穴を使うコウモリ
高知市広報「あかるいまち」2016年7月号より
穴でよく見つかるキクガシラコウモリ。
●穴でよく見つかるキクガシラコウモリ。
 高知県には、たくさんの穴(洞窟)がある。
 有名な場所としては、香美市の龍河洞や土佐山の菖蒲(しょうぶ)洞、日高村の猿田洞などがあるが、ほかにも地元の人しか知らないような小さな穴がたくさんある。これらの穴は、内部の探索が古くから行われていて、構造やそこに住む生物の研究の成果が発表されている。その中でたくさん見つかっているのが、穴を生活場所に使うコウモリである。
 これらのコウモリたちは、自然にできた穴以外でも見つかる。例えば、防空壕(ごう)や弾薬庫などの戦争遺跡、かつてショウガや文旦などを熟成させるために寝かせていた穴などである。自然の穴がない地域では、コウモリはそのような人が使わなくなった穴を生活場所としているのだ。規模が小さい穴は昼間に休む場所として、規模が大きく内部の構造が複雑な穴は冬眠や子どもを育てる場所として利用するなど、利用の仕方はさまざまである。
 ところが近年、これらの穴は「崩れたら危険」ということで、埋められることが多くなってきた。ほとんどの場合、作業は昼間に行われるので、中で休んでいるコウモリたちは逃げられずにそのまま埋められてしまう。
 コウモリは夜、空を飛び回り昆虫を食べて暮らしている。コウモリが食べる昆虫の中には蚊やガなど、人の暮らしや農業に被害を与える種も含まれる。たくさんのコウモリが暮らしている穴が埋められ、コウモリがいなくなると、餌として食べていた害虫が増えるなど、その地域の生態系が崩れてしまう可能性がある。
 昔からコウモリは福を呼ぶ生き物として親しまれ、人と共存してきた。人の暮らしの近くにある穴を「危険だから」と埋めてしまう前に、コウモリが使っているかどうかを調べてほしい。もし、その穴にコウモリが居た場合は、入り口に人は入れないけれどもコウモリは通り抜けられる柵をするなど、人の安全を図りつつ、コウモリも暮らしていける方法を考えていけたらいいと思う。

こうちミュージアムネットワーク 四国自然史科学研究センター センター長 谷地森(やちもり) 秀二
▲このページの先頭へ
高知市トップページ  > あかるいまちトップページ  > 歴史万華鏡(もくじ)  > 2016年7月号
Kochi city
All Rights Reserved. Copyright Kochi-city.