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このページは、高知市広報「あかるいまち」に掲載されている「歴史万華鏡」のコーナーを再掲したものです。
歴史万華鏡
執筆「こうちミュージアムネットワーク」の皆さん
第19回 藁工(わらこう)倉庫からはじまる「再生」
高知市広報「あかるいまち」2013年9月号より
現在のアートゾーン藁工倉庫(南金田)
●現在のアートゾーン藁工倉庫(南金田)
 江ノ口川に架かる一文橋近くに、白い土佐漆喰(とさしっくい)の壁とセメント瓦の倉庫が立っている。壁には「藁(わら)」の文字と丸いロゴマーク。一体何の建物なのだろうと感じている人も多いのではないだろうか。

 ここは、もともと多くの木工所が立ち並ぶ地域であった。戦後に梱包資材用の藁を保管するための倉庫として建てられ、その後バイパス建設のため一部が立ち退きを余儀なくされる等の取り壊しもあったが、現在の藁工倉庫としてかたちを残した。新しい梱包資材の出現で藁の需要がなくなり、すでにその役目を終えていたが、二〇一一年十二月に改修され、レストランや多目的ホール、「藁工ミュージアム」を擁する複合施設「アートゾーン藁工倉庫」としてオープンしたのである。

 藁工ミュージアムは、日本全国にアール・ブリュットを主に扱う美術館を建設しようというプロジェクトの一環で設立された。アール・ブリュットとはフランス人画家のジャン・デュビュッフェが創案した言葉で、「生(き)の芸術」と訳され、専門の美術教育や主流の文化潮流の影響を受けていない人々が生み出す絵画や造形作品をさす。このプロジェクトにおけるコンセプトの一つとして掲げられたのが、「地域に古くからある建造物を改修すること」であった。全国各地で候補地が挙がる中、高知市の藁工倉庫がその一つとして見いだされたのである。

 アール・ブリュットは、日本では障がい者アートとして認識されることが多くある。しかし、藁工ミュージアムでは障がいの有無に関わらず、作り手自身の「どうしても表現せずにいられない」という思いから作られた魅力的な作品を紹介していきたいと考えている。

 どの地方都市に行っても見慣れた大型チェーン店の看板が立ち並び、その地域独特の風景が失われつつある。そんな中、幹線道路沿いという立地にもかかわらず残されていた藁工倉庫は、希有(けう)な存在だと言えるだろう。この藁工ミュージアムの存在が、古いものを壊して新しいものをゼロからつくりだすだけではなく、古いものを活かし新たな価値を見いだしていく「再生」について考えるきっかけとなることを期待している。

こうちミュージアムネットワーク 藁工ミュージアム 学芸員 大久保 恵理奈
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