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このページは、高知市広報「あかるいまち」に掲載されている「歴史万華鏡」のコーナーを再掲したものです。
歴史万華鏡
執筆「こうちミュージアムネットワーク」の皆さん
南国土佐大博覧会「天文館」
高知市広報「あかるいまち」2018年4月号より
天文館(南国土佐大博覧会誌より)
●天文館(南国土佐大博覧会誌より)
 春の星に、レグルスと呼ぶ一等星がある。距離は約八十光年。一光年とは光の速さで一年かかる距離という意味で、レグルスの光は、約八十年前の光を見ていることになる。
 約八十年前の春、市で天体望遠鏡を空に向け、多くの人に宇宙の神秘を説いた人物がいた。五藤斉三(せいぞう)氏である。土佐藩家老、五藤家ゆかりの人物で、五藤光学研究所を創業し、昭和十二(一九三七)年の南国土佐大博覧会に「天文館」を出展した。当時の高知新聞には「ドーム式の天文台造りで館内には五藤斉三氏が高知市へ寄贈した四インチの望遠鏡を据付け入場者に太陽の黒点を観測せしむる事となっている。」とある。
 五藤氏は、昭和四十(一九六五)年に安芸市へプラネタリウムと天文台を寄贈している。亡くなる一年前の昭和五十六(一九八一)年には、県へ口径六十センチの望遠鏡を寄贈し、高知における自然科学の普及に力を注いだ。
 口径六十センチの望遠鏡と共に完成した芸西天文学習館(現在は二代目の望遠鏡を運用中)では、天体観測会が続けられており、専門講師が子どもたちに星空の世界を語り聞かせている。
 「わたしが小学校に入る前、親と一緒に南国博覧会へ行きました。丸い屋根の建物の中へ入ると人影が現われ、『ぼうや、珍しいものを見せてあげよう』と優しく語りかけてきました。そこには大きな望遠鏡があり、太陽の黒点が見事に写しだされていたのです。」天体観測会でこう語るのは、芸西天文学習館の講師を務める関勉(せきつとむ)氏。幼少の関氏に語りかけ、黒点を見せた人物が五藤氏その人だった。
 その約四十年後に二人は再会することになる。世紀の大彗星(すいせい)「池谷(いけや) ・関(せき)彗星」の発見者と、口径六十センチの望遠鏡の送り主としての再会である。
 七月二十四日開館の高知みらい科学館では、五藤光学研究所製のプラネタリウムが設置・運用される。二人の出会いのような、星の巡り合わせが起きることを願いながら、多くの人が宇宙を楽しむ場所となるよう準備を進めている。

高知みらい科学館 学芸員 前田雄亮
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